ドリル帝国ブログ

ボドゲと映画とときどき旅行

連載第一回最終話

トラックに引かれて異世界転生したら神様にチートスキルガン積みしてもらったのにスライムだったけどハーレムパーティで魔王を倒したらお払い箱にされたので魔王領でスローライフをおくっていたら実は俺だけの上限解放バグを見つけて世界征服一歩手前の悪役令嬢になった件

 死んだ・・・・・・。ボールを追いかけて道路に飛び出した幼女を助けるためにとっさにトラックの前に躍り出て幼女を道路の向こうにいる見知らぬおっさんにパスしてそのまま轢かれたのだ。
 今その後の状況を白い靄のかかったような死後の世界的なところで見ている。神様と一緒に。
「お前さんなかなか見どころあるからぱぱっと山程チートスキル載っけて異世界転生させたるわ。」
 軽い感じで神様がぶりっ子な手付きで人差し指を振るとなんだか確かに万能感が。
「ちょ、それはいいけど色々説明を・・・・・・!」
「達者でな~」
 慌てて説明を求めたのにジジイ・・・・・・いや神様はクソ爽やかな笑顔で手を振って、俺はそれを見ながらその世界から落ちていった。
「くそが~~~っ!!」

 落ちきると俺の体は地面を押し返し弾んだ。そう、異世界でスライムに転生してしまったのだ。だが慌てることはない。山程チートスキルをもらったのできっと人の姿になれるはず・・・・・・はずなんだがそんなスキルは見当たらない。頭の中のスキル一覧を検索しているとなにか近寄ってくる気配がする。感知力スキルってチート能力かな?と疑問を持ったが気配の方へ意識を向ける。
「まぁなんて可愛らしい生き物なの?」
 と、いきなり派手な露出度高めなフリフリ衣装の明るいヒロイン顔が俺のぷよぷよボディを抱きかかえる。
「おいおい、いきなり抱きつくなんて大胆なやつだな。」
 彼女も異世界の言葉で喋っていたが多分チートスキルのおかげで理解できたので同じく異世界の言葉で喋りかけた。どこから声が出てるのかは定かでないが。
「まぁ、言葉がわかるのね。素晴らしい出会いだわ。よかったら私がこの先の王都まで連れて行ってあげるわよ。」
「ホントか?しゃべるスライムなんて騒ぎにならないか?」
 渡りに船だが不安がないわけじゃない。とりあえず王都とやらに行く前に色々説明してもらってなんか大丈夫そうなのでとりあえず連れて行ってもらうことにしたのだ。

「我が娘が連れてきた奇異な生き物がこのように聡明で力もつ存在とは、ぜひとも魔王討伐の一行に加わっていただきたい。」
 連れて行かれた王都の中心にそびえ立つ王城の謁見の間で王様が最後にそんな爆弾発言をしやがった。俺を連れてきたのが王女様だったのはまぁいいとしていきなり魔王討伐とは話がぶっ飛びすぎだ。そしていつの間にか俺の横にイケメン勇者とそのパーティーメンバーが並んで片膝ついていた。勇者以外の3人は女だ。そのうちの一人に抱きかかえられて魔王討伐に出ることになってしまった。
「なんでこんな得体のしれないやつを仲間にしなきゃならないんだよ。お前そんななりで何ができるんだ?」
 勇者様と崇められているせいか傲慢な性格なようだ。道中一通り魔法やらスキルやらを見せてやったら魔王城につく頃には勇者より俺がモテモテになっていた。
「ふざけんなよ・・・・・・なんのためにコイツラを仲間にしたと思ってんだ。美味しい思いをしたいのは俺なんだよ・・・・・・」
 と、ブツブツ独り言を言う勇者を目はないが横目にしながら、他の仲間達に今日も俺は体を磨かれていた。

「くははははは、勇者を名乗る割には不甲斐ない。おまえたちはここで死ねぇい!」
 俺は無傷で気力十分なままなんだが勇者は最初の一撃でボロボロだ。仲間たちもすでにふっとばされて伸びている。ここは俺がなんとかするべきだろうと、すっと勇者の横につくと突然むんずと掴み上げられた。血走った目で勇者が俺を見て、ニヤリと笑った。
「この宝珠は一度だけ俺の言うことを何でもきかせることができる死命の宝珠だ。テメエの体に埋め込んだんでこれから一つ命令を聞いてもらうぜ。」
「それ、魔王に使えばよかったんじゃねぇのか?」
 俺に命令するぐらいだったら魔王に命令して自爆なり何なりさせればいいのにと思ったところではたと気付いてしまった。
「お、わかったって感じだな。そうだよ、魔王も倒してお前も亡き者にする、一石二鳥とはこのことだろ・・・・・・てことで、魔王を自爆魔法で倒せっよっ!」
 勇者の野郎は笑いながら振りかぶってそのまま俺を魔王めがけて投げた。まぁスライムを投げつけられたくらいでは微動だにする必要もなかったんだろうが、それが魔王と俺の運命を決定した。俺のやわらかボディがポヨンと魔王の胸板にあたった瞬間俺の意識も体も魔王もろとも爆発四散したのだった。

 意識が蘇ると俺はスライムではなく美少女になっていた。命令は実行するしかなかったが、命令以外の保険も実行できたので輪廻転生の秘奥義を発動させていたのだ。ただどこでどのように再転生するかはわからなかったのだが、近くにいた魔王の娘に転生したらしい。そもそも魔王の娘は勇者の魂食いの宝珠で抜け殻にされていたのだ。あのゲスな勇者のことだから、魔王を倒した後に抜け殻になった魔王の娘になにかしようと企んでいたのだろうが、俺の自爆で魔王もろとも魔王城まで爆破されてしまい魔王の娘の体を見つけることなく逃げ帰ったのだろう。
「とりあえずこの辺りに隠遁してしばらく様子を見るか。」
 この体に馴染むまではスローライフと洒落込むかと、悪魔や魔物を従えて魔王城の瓦礫を片付けてそこに新たな魔王城ではなくスローライフをおくるための街を作ることにしたのだった。

 ・・・・・・数年後、一度転生して極まったところにもう一度転生をしたからなのか俺はすでに魔王を超える力を得ていた。それでもまだ上限知らずで様々な能力を身に着けたり、身体的にも知能も精神も日々成長を感じる、まさに天井知らずな存在になっていた。おかげでスローライフを送りつつも手下となった魔物たちが着々と領土を広げていた。
「恭順する国は特産品を供出させ緩やかな支配を敷き、逆らう国は市民を操ってクーデターを起こさせ支配下に置くとは素晴らしき采配でございます。」
 今や右腕となった悪魔宰相がうやうやしく報告がてらおだててくる。玉座の前には100をこす悪魔や魔物の幹部たちが集っており、口々に俺を褒め称えている。
「あとはあの憎っくき勇者のいる国だけでございます。いかが致しましょう。」
 まぁ俺的には特に恨んでもいないが勇者はどうだかわからない。まぁ女好きの勇者からすると今の俺の姿はもしかしたら寝返ってくるぐらいの可憐さではあるんだけども。
「いいこと思いついたので俺があの国に行くよ。10万も連れていけば王様もこちらが勇者を出せといえば矢面に出してくるだろうし、ちょっと面白い感じにして世界征服を終わらせよう。」
「それはそれは愉快なことになりそうですな。では精鋭だけで10万の兵を揃えて彼の国に私が使者として赴きましょう。」
 感づいたのか悪魔宰相はもともと凶悪な顔を凶悪な笑みに変えてすっと一礼をするとその格好のまま姿を消す。
「さて、神様が転生してくれたのにこんな事になっちゃってよかったのかな?」
 なんとなく天を仰ぎながら、勇者を世界が注目する中で最高に赤っ恥かかせるにはどうするのが効果的なのかを高速思考の許す限りシミュレートするのであった。

第一回最終話・完